師匠 鈴木丈織のベネフィットドクター⑳

経営参謀に欠かせないマインド・スキル・センスの構築
好かれ、頼られるリスニング・スキル(1)

 私たちは、お客様や職場の仲間、また友人や家族など、毎日さまざまな人と会話をします。コミュニケーションには慣れているはずなのに、実際は「えっ、そんなつもりじゃないよ?」「私は、こういうふうに聞いたけど…」「いや、こう言ったんだよ!」などちょっとしたくい違いがよく起こります。そのために気まずい思いをし、その修復に余分な時間を費やして、仕事の能率が悪くなったり、お客様や職場での人間関係にも悪影響を及ぼしてしまったこともあるでしょう。

 反対に、「今日は楽しかった。ありがとう」「いい話ができて本当によかったです。また、ご一緒してください」と、時間を忘れるほど話に夢中になるときがあります。双方向のコミュニケーションがうまくかみ合って、意気投合したと感じられたときでしょう。たまたま気の合う人同士だったのかもしれません。しかし、気取らず素直に話ができた人は、相手に感謝し、いい人だなという印象を持ち、うまくやっていけそうだ、という気持を持つようになります。相手が自分の話を熱心に聴いて受け止め、真意をくみ取って自分を認めてくれたと感じたからです。その満足感がその後のお互いの人間関係をよりよいものにしていくのです。

 人は、自分に素直な関心を向け、価値と存在を認めてくれる人に好意を持ち、信頼をよせます。それが、「好かれ頼られるリスニング・スキル」の秘訣です。

 1. 好かれるリスニング・スキル

 次の点に気をつけると、あなたが醸し出す影響力によってお客様の不安や緊張を和らげ、リラックスしてのびのびと話ができる雰囲気をつくり出すことができます。

1)視線を合わせる

 話しているとき80%以上目が合っていれば、親近感や誠実さ、自信を、15%以下だと無関心や用心深い感じ、鈍感さを感じるというヴァーガス博士の報告があります。「目は口ほどにものを言い」と言われるように、視線を合わせることが重要です。「あなたに関心がありますよ」「あなたの話をちゃんと聴いていますよ」とお客様に知らせてあげることです。メモをとることに一生懸命でお客様を見ていないと、せっかくいい話だと思って聞いていてもお客様には伝わりません。目を閉じて聞くのも『興味がないらしい』と誤解されます。

2)話に応じた顔の表情を向ける

 お客様の方に顔を向け、柔らかい視線とともに感じのよい表情を送ります。それは「今のポイント、よく分かりました」とお互いの確認になります。明るい話には明るい表情を、悲しい話には悲しい表情で同調すると、お客様を安心させ、より真剣に聴いているという印象を与えます。暗い表情や無表情、疑い深いまなざしを向けるような聞き方は、お互いに心を交わしあってコミュニケーションを図ろうという気持が伝わりません。