師匠 鈴木丈織のベネフィットドクター⑰

経営参謀に欠かせないマインド・スキル・センスの構築
お客様を納得させる営業センス(5)

「常識の中の奇抜さ」

 お客様が求めているのは人から「ステキね」と言ってもらうことです。それにはみんなが持っているようなものでは話題性がないのでダメですが、あまり奇抜すぎるものも好まれません。「よく言えば個性的だけれど、悪くいえば物好き」では、だれも真似したくないので意味がないのです。最先端をさりげなく取り入れて自分のものにしているのが、さすがだ!と思われるように、色や形がちょっと変わっている程度、いわば「常識の中での奇抜さ」が必要なのです。

 例えば、水玉模様が流行っているとき、大事なのは流行に敏感だとアピールし周囲との一体感を得ながら、いかにして個性を発揮するかです。同じ水玉でもちょっとかわっている、そんな商品に出会ったとき所有欲が刺激されます。商品をお勧めするときは、そこを意識し、刺激するのがポイントです。

 「水玉は今年の流行ですよね」ではなく、「この服は流行のドットを使っていますが、色使い、柄いきがちょっと変わっているんですよ」と言うほうが、「欲しい」という気持ちをより刺激します。

 また、流行とは関係のないオーソドックスなデザインを勧めるときでも同様です。例えば、ストライプ柄が欲しいというお客様に対して、「お客様はご立派な体格なので、太めのストライプ柄がお似合いですよ」と提案したり、「このストライプは一見オーソドックスに見えますが、実は一本一本模様が異なっているんです。ジャガードではめずらしいでしょう」と商品のこだわり部分を説明します。

 そうするとお客様は、だれもが持っていそうな無難な商品ではなく、「自分に似合う商品を選んだ」「一見ふつうだが、実は個性的な商品を選んだ」と満足します。ちょっとしたアドバイスをすることで、お客様の所有欲を刺激し、購買意欲を高めることができるのです。

 そして、お客様が迷うのは、個性的でありたい心と常識的でありたい心の狭間で決めかねているときです。ここでは積極的にお勧めしましょう。どちらを買うかを迷っているのですから、どちらをお勧めしてもそれなりに説得力があれば、どちらでも受け入れてもらえます。お客様は、営業パーソンが後押ししてくれたことによって迷いがなくなり、自信をもって決断できます。お客様に確信を持たせてあげることができるからです。ここまでくれば、第5段階、6段階がクリア。そして最後の段階です。

 営業パーソンは、お客様に買うことのメリットを十分知らせてあげることが重要です。商品自体のメリットの他に、買うことによって流行遅れにならない、仲間はずれにもならないから孤独が避けられるという最大のメリットがあります。個性的な面はその使い方の中で発揮できるアドバイスをしてあげるとよいでしょう。