師匠 鈴木丈織のベネフィットドクター⑧

部下の真意を見抜くポイント

 部下と議論ができるくらい対等な関係で臨み、部下の潜在能力をも引き出して、さらに新しいアイデアを見つけられるような対話にしていくのが、部下育成に求められる所長の力量です。『話し手がいちばん訴えたいことは何なのか』という点に意識を集中して聞くポイントをまとめましょう。

1.言葉の表面的な意味だけでとらえるのではなく、内容全体から理解しようとする

 相手の使っている言葉を知っているだけでは理解できません。話し手はリンゴといえば「赤く熟れたリンゴ」を前提にし、あなたは「田舎の青リンゴ」をまず想像するかもしれません。「構造改革」や「リストラ」など専門家と一般の人とでは意図が違うかもしれません。言葉の抽象性、多義性に十分注意が必要です。

2.話の目的を正確にとらえる

 話の目的は知識や情報を伝達するための連絡なのか、理解させようとする説明なのか、何かを勧めて行動を求める説得なのか、間違いを正して改めさせる忠告なのかなど、相手が何を求めているのかを正確に聞きとらなければ、期待に応えることはできません。疑問点は必ずその場で質問して確認することが重要です。

3.話の主題をはっきりさせる

 核になる考えは何か、要点は何か、結論は何かなど、重要なところは絶対に聞き漏らさないように細心の注意が必要です。ポイントをメモしたり、「言いたいことはこれだ」とまとめながら内容を整理していくと理解しやすくなります。

4.語調に注意し、強調される言葉をしっかり聞く

 話し手が繰り返し使うキーワードやキーフレーズは部下の「こだわり」としてしっかり押さえましょう。とくに声のトーンが高くなったり、張りが感じられるところは相手が自信を持って聞き手に訴えたいところです。

5.言外に含まれる意味もとらえるようにする

 「所長今晩、お忙しいですか?」は『相談したいことがある』という意味でしょう。言葉の意味に反応するのではなく、言外に含まれる意味もとらえることが、相手の真意への近道です。言葉の奥に隠れている相手の期待を見逃さないことです。