師匠 鈴木丈織のベネフィットドクター④

 

理想の幹部職員を育てる条件

 幹部職員に求められている役割は、現場に密着したものです。したがって、必要な能力は現場に密着した教育によって伸ばすべきものです。やはり所長のOJTが重要になります。いきなりレディメードの研修に出ても効果は期待できないでしょう。幹部候補ともなれば、自分なりの自信もあれば、プライドもあります。経験も豊富で人間関係もそれなりにできています。いまさら教育、研修なんか受けなくても、これまでの経験と勘で成果を出していけると思っているベテラン社員なのです。興味がなければ学んでいるふりをしているだけで、まったく身につくものではありません。

 しかし、その幹部候補の経験は貴重です。大いに役立つものである、ということを幹部候補自身に分からせることが重要です。なぜなら、幹部の強化・育成を図るためには、やはり次の三つの経験も大きな要素になるからです。これらの経験が相互作用し、本人の向上意欲がいっそう高まって、理想の幹部を育てる条件となるからです。

 1.身体的経験(働きの中にある体験)
 2.知的経験 (学習による向上)
 3.心的経験 (経営者のフォロー)

 これらをうまく引き出すためには所長と幹部候補との双方向のコミュニケーションが欠かせません。忙しい所長はわざわざOJTの時間を取ることは難しいでしょう。しかし、「できるだけ密にコミュニケーションをとろう」という意識さえあれば、しっかり観察し1分の声かけでも有効な教育になります。そして、幹部に求める役割の達成バランスを診断し、弱点や問題点を把握した上で強化すべきポイントを集中的に教育すれば、バランスのよい幹部を育成できるのです。