村上選手と大谷選手の税金

1.村上選手がプレゼントされた3億円の家

今年は野球界で話題が尽きません。ヤクルトの村上宗隆選手が10月3日に神宮球場で、シーズン56号本塁打を放ち、史上最年少で三冠王を達成しました。シーズン最終試合での達成ということで、ヤクルトファンだけでなく、日本中が湧いた瞬間ではなかったでしょうか。

この快挙に対し、スポンサーから「3億円の家」がプレゼントされることになりました。この3億円の家にどのような税金がかかるのか気になります。プロ野球選手は一つの球団に属しているので、給与所得者と似ていますが、実は個人事業主と同様、事業所得として所得税の確定申告をしています。

3億円の家が役務の提供の対価ということであれば、年棒に加算されて事業所得になるのでしょう。しかし、今回はプレゼントですから、対価性がなく贈与になります。所得税法には非課税の規定があり、個人からの贈与により取得するものには所得税はかかりませんが(所得税法9条1項 17 号)、法人からの贈与は一時所得になります。一時所得の税額は収入金額から収入を得るために支出した金額と特別控除額(50万円)を控除した金額を1/2にして計算をします。

村上選手の所得税が最高税率の45%であることは間違いありません。贈与された家の時価をどう評価するかという問題はありますが、時価3億円と考えると67,387,500円の所得税を支払うことになり、さらに翌年には住民税も支払わなければなりません。他の収入があるので、税金が払えないと言うことはないのでしょうが、そうでなければ家だけもらっても納税資金に困っていますね。

 

2.大谷選手の税金

もう1人、注目されている野球選手といえば大谷翔平選手です。先日 30million ドル(約43億円)の1年契約でサインしたと報道されました。アメリカの連邦所得税は超過累進税率で最高限界税率は37%です。

また、アメリカには日本にはないプロアスリート独特の税制があります。「Jock Tax」と呼ばれる州税で、居住していない州で、試合等に参加して役務の提供をした場合、一定の課税がなされます。大雑把にいえば、年構 × (Duty Days in State / Total Duty Days) ×州税率です。これをアウェイの州ごとに申告納税しなければなりません。プロアスリートは平約すると10州ほどのJock Taxを申告納税しているそうです。アウェイの州で支払ったJock Taxは、居住している州の所得税から税額控除できるのが基本ですが、いくつもの州に申告をする手間は大変です。選手だけではなく、同行する球団職員等にもJock Taxは課せられているようですから、球団側で税務専門家を手当てしているのでしょう。

日本とアメリカでは球団事情も税金の構造も異なりますから、単純に比較できるものではありませんが、村上選手や大谷選手の活躍を一番喜んでいるのは、税金を徴収する側かもしれません。

 

3.「副業300万円以下は雑所得」のその後

前号でお伝えした「副業300万円以下は雑所得」について10月7日に意見公募の結果が発表されました。7,000件を超える意見が寄せられ、国税庁は形式的に 300万円で判断するのではなく、①所得を得るための活動が、社会通念上事業として認められるものであるか、②取引を記録した帳簿書類の保存があるかで判断をすることとしました。解説では帳簿があっても、本業収入の10%未満である、赤字解消のための取組をしていない場合は事業として認められないとされています。事業の実体が無いのに、飲食代や携帯代などを経費にして赤字を作り出し、給与所得と相殺する。このような節税は認めないという主旨でしょう。