令和5年度税制改正大綱速報①

先日、与党から令和5年度税制改正大綱が発表されました。税制改正大網に記載された内容がそのまま法令の改正につながるものではないですが、改正の方向性を理解するにあたって、有用であると考えられることから、一部の内容について整理します。

 

1.令和5年度税制改正の基本的な考え方等

政府は記帳水準の向上を重視する一方、小規模事業者の半数以上が帳簿を手書きで作成しており、また、個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割にとどまっているのが現状とのことです。さらに、個人の青色申告における簡易簿記は複式簿記に移行するための準備として期待されていますが、簡易簿記での申告者の3分の1超が10 年以上簡易簿記による記帳を続けている状況とのことです。この状況を変えるため、会計ソフトの活用による複式簿記の普及等により、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行うようです。加えて、電子帳簿等保存制度の見直しを行い、新たな猶予措置の導入や、検索要件等の緩和の導入が予定されているようです。

 

2.個人所得課税

非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)の見直しがあります。年間の投資水準はこれまで120万円が限度でしたが、新たに成長枠を新設し、360万円まで可能になりました。生涯にわたる非課税限度額(非課税とされる投資の累計額)も現行の800万円から 1800万円に拡大されており、さらに投資期間が無期限となったことから、個人それぞれの嗜好に応じた投資が可能になったものと考えられます。その他、特定被災事業用資産の損失や個人災害損失の雑損控除を超えた損失の繰越期間を5年に延長、源泉徴収票の提出方法等の給与関係事務の見直し、個人事業の開始又は廃止、青色申告関係届出手続きの簡素化も言及されています。

 

3.資産課税

相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とされます。加えて、相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る柀相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算することとされます。したがって、相続の開始前における預金調査の範囲が拡大することになることから、預金通帳等の取引履歴を保管する期間も拡大することになると考えられます。また、相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とされるという、個人災害損失の雑損控除のような制度を導入する点に言及されています。

さらに、贈与税の非課税措置として、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合、受贈者が30歳に達した場合等において、残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用する等の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する、直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合、受贈者が50歳に達した場合等において、残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとした上、その適用期限を2年延長するとされています。