令和5年度 税制改正大綱速報②

先日、与党から令和5年度税制改正大綱が発表されました。税制改正大綱に記載された内容がそのまま法令の改正につながるものではないですが、改正の方向性を理解するに当たって、有用であると考えられることから、前号に引き続き一部の内容について整理します。

 

1.法人課税

①一般試験研究費の額に係る税額控除制度に関する見直し

税額控除限度額の計算式が次のように見直されます。なお、カッコ内の数値が現行制度です。税額控除限度額を計算するために、税額控除率を計算する必要があります。増減試験研究費割合が−12%(9.4%)超である場合の税額控除率は、「11.5%(10.145%)+(増減試験研究費割合-12%(9.4%)× 0.375(0.35)」と計算します。一方で、増減試験研究費割合が-12%(9.4%) 以下である場合の税額控除率は、「11.5% (10.145%)-(12%(9.4%)-増減試験研究費割合)×0.25(0.175)」と計算します。今回の改正では、試験研究費の税額控除をより受けやすくなるよう、税額控除率の下限を現行の2%から1%に引き下げ、上限を現行の10%から14%にすることとされました。なお、基準年度比売上金額減少割合が2%以上であり、かつ、試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える事業年度における、控除税額の上乗せ特例は、適用期限の到来をもって廃止するとされているため留意が必要です。

 

②特別試験研究費の額に係る税額控除制度に関する見直し

特別試験研究費とは、試験研究費の額のうち国の試験研究機関等に委託する試験研究などに係る試験研究費をいいます。現行制度では、a特別試験研究費の額のうち国の試験研究機関等との共同研究等に係る一定の試験研究費の額の30%に相当する金額、b特別試験研究費の額のうち産業競争力強化法に規定する研究開発型ベンチャー企業との共同研究等に係る一定の試験研究費の額の25%に相当する金額、c特別試験研究費の額のうち上記a及びbの一定の試験研究費の額以外の金額の20%に相当する金額について、それぞれ、法人のその事業年度の調整前法人税額から控除することができます。関係法令の改正が前提ではありますが、試験研究費の額の範囲が変更されることとなりました。bについては、産業競争力強化法に規定する研究開発型ベンチャー企業との共同研究等が除外され、その代わりに産業競争力強化法に基づき経済産業大臣の証明がある特別新事業開拓事業者との共同研究等に係る一定の試験研究費の額が対象となりました。cについては博士の学位を授与された者等による一定の要件を満たす法人内における試験研究費の額が新たに含まれることになりました。

 

2.消費課税

①適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置

令和5年10月1日から令和8年9月30日の各課税期間において、免税事業者が、適格請求書発行事業者又は課税事業者選択届出書を提出し、事業者免税点制度の適用が受けられなくなった場合、納付する消費税額を課税標準額の20%に軽減できる規定が設けられます。なお、当該措置は、課税期間の特例を受ける課税期間及び令和5年 10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により事業者免税店制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用されないため留意が必要です。

 

②一部事業者に対する帳簿のみの保存による仕入税額控除の容認

基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000 万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置が講じられます。