令和5年度改正を読む

1.はじめに

インボイス制度導入まで半年を切りました。令和5年度改正で新しい制度が加わったこともあり、ネット上の情報は玉石混交です。正しい理解をして、クライアントへの指導も含めて早めの準備をしたいものです。今回は「2割特例」を取り上げます。2割特例は、ざっくり言えば、消費税の申告時に売上に係る消費税の2割を納付すればよい、という納税者にとって有利な制度ですが、全事業者がいつでも使える制度ではありません。

2.小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)

①適用対象事業者

2割特例を適用できる事業者は「適格請求書発行事業者(登録事業者)」に限定されます。登録事業者は免税事業者となれる場合でも消費税の納付義務が生じます。「適格請求書発行事業者の登録申請書(インボイス登録申請書)」を提出すれば、課税事業者選択届出書の提出は必要ありませんが、課税事業者選択届出書を提出しただけでは、登録もされず、2割特例を使うことはできません。

 

②適用対象期間

インボイス制度が始まる令和5年 10月1日から以後3年を経過する日(令和8年9月30日)までの日の属する課税期間が対象です。個人事業者は令和8年分、3月決算法人は令和9年3月決算期まで2割特例の適用が可能です。

ただし、登録事業者であればいつでも2割特例が使えるわけではありません。登録しなければ、あるいは課税事業者選択届出書を提出しなければ、免税事業者となれる課税期間であることが必要です。基準期間が1,000 万円を超える課税期間については適用できません。通常の課税売上高が1,000万円以下であっても、固定資産の売却などで課税売上高が1,000 万円を超えてしまうと、2割特例が使えない期間が生じます。

また、課税事業者選択届出書の提出により、令和5年10月1日前から課税事業者になっている場合、調整対象固定資産の仕入れを行った場合等、2割特例の適用が制限されることがあるので、注意が必要です。

 

③有利選択が可能

本則課税、簡易課税のどちらで消費税を計算することになっていても、2割特例は選択可能です。簡易課税を選択すると2割特例が適用できないと考える向きもありますが、そんなことはありません。

簡易課税制度とは異なり、事前の届出は不要ですし、継続適用の条件もありませんから、決算時に有利な方を選択することができます。申告書の右下にある「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」という欄に「〇」をつけることで、適用を受けることができます。

 

3.おわりに

令和5年度は「2割特例」のほか、小規模事業者について1万円未満の支払いはインボイス無しで仕入税額控除を認める「少額特例」(6年間)、振込手数料を差し引いて振り込む場合等の「少額な返還インボイスの交付義務免除」(恒久措置)、「登録制度の見直しと手続の柔軟化」が改正されました。