国税庁 所得税基本通達の改正案を修正

収入金額300万円以下でも帳簿保存あれば原則事業所得に

 

国税庁は10月7日、今年8月に実施した事業所得と業務に係る雑所得の判定などに関する所得税基本通達の一部改正案に対する意見公募(パブリックコメント)の結果を公表した。

今回の意見公募には7千通を超える7059通の意見が寄せられ、その多くが反対意見だった。通達改正の趣旨等に関しては、「今回の通達改正は、副業を推進する政府の方針に逆行するものではないか」、「事業所得と雑所得の区分は、実態を見て判断すべきであり、形式的な基準を設けるべきではない」、「今回の通達改正は、増税ではないか」などの意見があった。

これに対して国税庁では、「国税庁においては、シェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動」について、適正申告のための環境づくりに努めており、今回の所得税基本通達の改正も、その一環として実施したものです」、「今回の通達改正により、所得区分の判定が明確化され、申告しやすい環境が整備されることから、副業を推進する政府の方針に逆行するものではないと考えています」、「事業所得又は業務に係る雑所得に対する従来からの考え方に変更を加えるものではありませんので、税負担額が変更されるものではないと考えています」という考え方を示している。

また、主たる所得か否かを基準とすることについては、「どのような所得が主たる所得に該当するのか不明確である」、「フリーランスの場合は、契約形態によって所得区分が分かれる場合があるが、この場合、主たる所得はどうなるのか」、「会社を辞めずに起業した者は、給与所得を得つつ、事業収入が300万円を超えない場合が多いが、こうした者も業務に係る雑所得に区分されるのか」などの意見が寄せられた。

これについて国税庁は、「事業所得と業務に係る雑所得の所得区分の判定については、パブリックコメントにおける御意見を踏まえ、主たる所得かどうかで判定するという取扱いではなく、所得税法上、事業所得者には、帳簿書類の保存が義務づけられている点に鑑み、帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定することとし、通達を修正いたしました」、「この修正により、収入金額が300万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、原則として、事業所得に区分されることとなります」との考えを示した。

今回修正されたのは、35-2(業務に係る雑所得の例示)の注書で、修正前は「事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない」というものだった。

修正後は、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)

の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する」となっている。

なお、同通達は令和4年分の確定申告から適用することが示されている。