免税事業者のインボイス制度への対応

1.インボイス制度への対応

インボイス制度導入後に仕入税額控除を行うためには、「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書等(いわゆるインボイス)が必要ですが、全ての事業者が「適格請求書発行事業者」として登録する必要はありません。取引先の態様によってはインボイスの発行が不要なため、登録申請の必要がないケースもあります。

①取引先の全てが消費者又は免税事業者である場合

 支払った金額を経費にしない個人消費者や、事業者であっても売上のほとんどが居住用建物の賃貸料であるなど課税売上が1,000万円以下で免税事業者に該当するため、仕入税額控除を行わない場合にはインボイスの発行が不要です。塾や理美容業、不動産賃貸業などは該当する可能性があります。

②取引先の全てが簡易課税制度を適用している場合

 インボイス制度の導入後も、簡易課税制度については、現行同様、売上に係る消費税額に一定割合(みなし仕入率)を乗じて仕入税額控除を行うことができます。実際の仕入税額は計算に関係しないため、インボイスの発行が不要です。

2.売り手側が免税事業者のとき

取引先の全てが上記の①、②に該当するのであれば「適格請求書発行事業者」として登録する必要はありません。そのまま免税事業者として消費税の納税義務が免除されます。しかし、取引先の事業内容の全貌を知り、取引先が免税事業者であるか、簡易課税制度を適用しているかを把握することは困難です。

塾や理美容業などの取引先は個人消費者が多いですが、理美容業では芸能関係の人が経費として仕入税額控除をしている可能性があります。不動産賃貸業でも駐車場代について仕入税額控除をしているかもしれません。法人契約であればわかりやすいですが、個人だからといって消費者とは限りません。免税事業者のままでいることで、取引先を失う結果を招くかもしれませんので、慎重な検討が必要です。

3.免税事業者からの仕入れに係る経過措置

免税事業者からの仕入れは原則、仕入税額控除ができませんが、取引への影響に配慮して経過措置が設けられています。インボイス導入後、3年間は消費税相当額の8割、その後の3年間は5割が仕入税額として控除が可能です。