インボイス制度導入まであと1年半

  • はじめに

令和5年10月から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。令和元年10月に複数税率が導入されたときから、4年後にインボイス制度を導入することが決まっており、4年間は簡素な方法である「区分記載請求書等保存方式」を採用していました。令和5年10月から登録事業者になるためには、令和5年3月末までに税務署長に申請して登録をする必要があり、仕入税額控除の要件として請求書等への記載事項も変わります。

  • 適格請求書等保存方式とは

消費税の基本的な考え方は、売上げに係る消費税額から、仕入れに係る消費税額を控除(仕入税額控除)して、その差額を納付するというものです。インボイス制度の導入によって大きく変わるのは仕入税額控除に関する部分で、①仕入税額控除のためには「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書等(いわゆるインボイス)」が必要になる、②インボイスを発行するためには、税務署長に申請して「適格請求書発行事業者」に登録する必要がある、という2点です。課税事業者でなければ「適格請求書発行事業者」に登録できませんから、免税事業者がこの登録を行いますと、課税事業者を選択したことになります。導入時は課税事業者選択届の提出は不要ですが、登録後に基準期間の売上高が1,000万円以下となっても免税事業者にはならず、消費税及び地方消費税の申告納税義務が発生します。

  • 適格請求書発行事業者への登録申請

登録申請は令和3年10月1日から始まっています。令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として、令和5年3月31日まで(困難な事情がある場合には、令和5年9月30日まで)に登録申請書を提出しなければなりません。現時点ではe-taxで申請すると約2週間、書面申請の場合は約1カ月で登録番号が通知されます。

締め切り直前になると登録申請が集中し、登録番号の通知に時間がかかることが予想されます。登録申請後に審査が行われ、インボイスセンターから問合せがあるかもしれません。インボイスの交付が必要な事業者の登録申請手続きは早めに行いましょう。

  • インボイスの記載事項と交付義務

インボイスは必要事項が記載されていれば、請求書、納品書、領収書、レシート等書類の名称は問いません。記載事項は、①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、②取引年月日、③取引内容、④税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率、⑤税率ごとの消費税額等、⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称です。

店舗や事務所のように、毎月の家賃支払時に請求書や領収書の授受を行わない場合には、賃貸契約書に登録番号を記載するとともに通帳で振込内容が確認できるなど、複数の書類によって上記①~⑥の記載事項を満たしていればよいこととされています。

適格請求書発行事業者は、適格請求書を交付する義務と交付した適格請求書の写しを保存する義務が課されており、軽減税率対象品目の有無にかかわらず、取引先から求められた場合には、適格請求書を交付しなければなりません。ただし、3万円未満の公共交通機関の旅費、自動販売機での販売、郵便切手など一定のものについては適格請求書の交付義務が免除されています。