所得者らしい振る舞いだから

名義人課税が原則という見解

 不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき、または他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。

これは、贈与に関する税務通達です。

 

名義借りゆえに贈与課税しない場合

 原則は名義人課税ですが、必ずしも杓子(しゃくし)定義にはしないという、次のような取扱通達もあります。

①これらの財産の名義人となった者(その者が未成年者である場合には、その法定代理人を含む。)がその名義人となっている事実を知らなかったこと。

②名義人となった者がこれらの財産をしよう収益していないこと。

 

名義借り財産は相続財産

贈与は合意により成立する契約によって財産移動が起きるので、合意形成のない場合は、名義者への所有権移動が起きず、名義借り財産は、名義を借りた者の所有財産のままです。

相続財産とされる名義貯金(未成年者の子への親からの資金移動は親権者の行為であり通常は名義借り預金とはならない)などは、その代表例です。

その他、名義土地や名義株式、名義車両船舶などというものも存在し得ることになります。

 

名義借り車両という裁決判断

 親が子供の名前で自動車を購入し使用していたため、子供に対して課税庁が贈与課税をしたケースにおいて、名義借用をさせただけで、贈与の意思も事実もなく、課税されるいわれはないと主張して係争になった事例があります。

審判所は、①車両の有利購入条件を満たすための名義借り購入であり、②下取り車両も親のもので、本体代金も親が払い、③子は購入時の車種選定に関与しておらず、④購入車両は親の自宅で保管され、名義貸しの子は日常的に本件車両を使用しておらず、⑤利用もしない者に対して車両を贈与するとは考え難く、⑥贈与の事実を疑わせる事情がある、として処分取消としました。

また、係争中に親は本件車両を売却して同売却代金を受領し、新たな車両購入をしており、これは正に所有者らしい振る舞いだ、を評しています。