日本における難民認定申請の現状

各国での難民受け入れと課題

 内戦が続くシリアからの難民受け入れが課題になり、世界では積極的な受け入れを求める声が高まっていましたが、フランス・パリでのテロ等を受け、各国で難民申請に関し慎重な対応を取らざるを得なくなってきました。しかし、テロ以前も日本が難民の受け入れに協力的であったかというと、決してそうとはいえません。そもそも日本の難民認定制度は他国と比較して圧倒的にハードルが高いのが実情です。

 

日本で「難民認定」は難しい?

 「難民」とは、「人権、宗教、国籍、特定の社会集団の構成員であること、または政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという、十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないが、またはそれを望まない者」とされています。難民として認定されるためには、この定義にあたることを、申請者自らが、書面等の証拠や証言により立証することを求められます。

しかし、実際のところ、「迫害を受けるおそれがある」ことを、書面で立証することが極めて重要な日本の運用では、この認定に足りる十分な証拠資料を集められるケースはごくまれです。平成26年度は申請が5000件、処理数は3169件に上りましたが、このうち難民と認定されたのはたった11件と1%にもなりませんでした。

 

それでも申請件数は右肩上がり

 ほとんどが認定されていないにもかかわらず、実は5年前の平成22年から申請件数自体は5倍近くにも跳ね上がっています。その要因のひとつとされているのが、就労を目的とした偽造申請の存在です。

平成22年3月の運用改正後、正規在留中の者が難民申請を行った場合については、一定期間経過後一律に就労を許可するようになったことで、就労を目的とした申請が増えたと指摘されています。

しかしこれでは、認定審査が長期化し、本来救済されるべき案件に支障をきたしてしまいます。こうした事態を受け、法務省では平成27年9月、就労しなくても生計維持が可能と判断される者や、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返す再申請者については、申請に対する判断がされるまでの間、在留は許可するが就労は許可しない方向に運用を見直すこととしました。

これは大変デリケートな課題ですが、こうした現状があることは知っておく必要があるかもしれません。