平成26事務年度の所得税等の調査状況と事例

国税庁が公表した平成26事務年度(平成26年7月~平成27年6月)における所得税等の調査状況によると、所得税調査は74万件(実地調査6万8千件、簡易な接触67万2千件)行われ、うち46万7千件から申告漏れ等が把握された。

その申告漏れ所得金額は8,659億円(1件当たり117万円)で、追徴税額は1,008億円(同14万円)となっている。なお、実地調査により申告漏れ所得金額の約6割を占める5,008億円が把握されており、以下のような事例があった。

【事例1】 内国法人の代表取締役であるAは、その内国法人からの役員報酬および配当のみを申告していたが、軽課税国であるX国およびY国に法人を設立し、X国の法人から支払いを受けた役員報酬を日本において申告していなかった。また、Y国の法人は事業実体のない資産運用を行っている法人であったため、特定外国子会社等合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制)を適用し、その所得に課税した。

【事例2】 Bと配偶者Cは、海外にあるX銀行およびY銀行に口座を開設しており、そこで得た預金金利は申告していたが、Y銀行を介して得た債券利子は申告していなかった。また、期限内に提出された国外財産調書には、当該債券の記載がなかったため、その利子に係る加算税については、5%相当額を加算した税額を賦課した。

【事例3】 学習塾を経営するDは、消費税の免税点制度を利用するため、入塾料やテキスト代、模試代など授業料以外の収入を全て除外するとともに、授業料も生徒数を圧縮するなどして、収入金額が1千万円以下となるように操作していた。

【事例4】 アイドルのコンサートチケット等をオークションサイトで販売していたEは、複数のIDを取得した上で、本人および複数の他人名義の口座で回収し、事業の帰属を隠ぺいしており、開業以来無申告を続けていた。

【事例5】 会社員Fは、平成19~24年に金地金等の貴金属を譲渡していたが、平成24年に支払調書の提出対象となった200万円超の金地金の譲渡に係る所得のみを申告し、申告分以外の譲渡所得は申告していなかった。