告発した査察事案の調査期間は着手から8ヵ月

大口・悪質な脱税者に対する刑事責任を追及するため、国税査察官が平成26年度に着手した査察調査は194件(前年度比4.9%増)と、5年ぶりに増加した。

また、平成26年度以前に着手した事案について、同年度中に処理した件数は180件(同2.7%減)で、その脱税額は総額149億7,500万円(同3.6%増)となった。

このうち、大口・悪質として検察庁へ告発された件数は112件で、告発1件当たりの脱税額は1億1,000万円(同11.1%増)である。税目別での告発件数を見ると、法人税が69件と全体の約6割を占めている。

業種別では、「不動産業」が16件と最も多く、売上除外や架空経費の計上が多く把握されている。以下、「クラブ・バー」10件、「建設業」8件の順。

なお、同年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に50箇所を調査し、延べ156名を動員した。また、告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで8ヵ月の調査期間を要し、そのうち最も長いものでは、約3年にわたる事案もあった。

国税庁では近年、経済・金融取引のグローバル化が進展している中で、国際取引を利用した事案や経済取引等のICT化への対応にも力を注いでおり、国際化への対応としては、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換制度の活用を積極的に行っている。

これにより、査察官を外国税務当局へ派遣して事案の説明をした上で情報提供を要請したものや、海外からの水増し現金仕入が想定されたため、情報提供を要請した結果、外国税務当局の調査により相手国に持ち込んだ現金の金額が明らかになり、真実の現金仕入の金額が判明した事例などがあった。

ICT化への対応では、デジタルフォレンジック(コンピュータやデジタル記録媒体の中に残された法的証拠を明らかにする手段や技術)用機材を活用した電子データの証拠保全及び解析を行っており、同ツールを使用し、削除や書き換えられていた架空の領収書のデータを発見した事例などがあった。