実調率は長期低下傾向にあり、法人は33年に一度

実調率は長期低下傾向にあり、法人は33年に一度

 

国税庁が公表した国税審議会議事録のなかで、国税職員数は減少傾向にある一方、申告件数は増加傾向にあることなどから、1年間に実地調査を実施している割合(実調率)は長期低下傾向にあり、平成25年度は法人が3.0%、個人が1.0%、即ち法人については33年に一度、個人については100年に一度しか調査に来ないという実態が示された。

国税職員数については、平成9年度の5万7,202人をピークに、定員削減方針を受けて減少傾向が続いており、平成27年度の定員は5万5,725人と、おおむね5万6,000人規模となっている。一方で、申告件数は長期的に増加傾向となっており、平成元年の2,111万件と比べると、平成25年は医療費控除や住宅ローン控除といった還付申告の著しい増加などにより、1.3倍の2,731万件という水準になっている。

このように職員数の減少傾向が続くなか、申告件数は増えている状況にあり、税務調査の複雑困難化・国際化、悪質な滞納事案への対応などが実調率の低下につながっているとしている。

こうした状況のなかで、今後の調査・徴収に関しては、「重点化」をキーワードに、課税上問題が発生しやすいとみられる国際取引関係や富裕層に対する調査、あるいは納付意志を全く示さない悪質な滞納の整理といったものに重点的に取り組み、大きな波及・牽制効果をもたらしたいとする一方で、課税上の問題が少なく、適正な申告が期待できる納税者には、ICTを活用した情報提供の充実や、電子申告、電子納税といった利便性の高いツールを提供し、自発的に適正な申告納税を行ってもらう環境の整備を進めたい考えだ。

また、現在実施している自発的な取り組みを促す方策の具体例として、資本金40億円以上の大企業を対象に、税務調査の際、税務に関するコーポレートガバナンスの状況を確認し、極めて良好であると認められた法人については、企業の自主的な対応に一定程度任せて、調査の間隔を延長するというスキームを平成24年7月から実施しており、結果として十数社に対して調査間隔の延長措置を採っていることが挙げられている。