海外移住による税逃れ防止に「出国税」を検討

海外移住による税逃れ防止に「出国税」を検討

政府は、富裕層の海外移住による税逃れを防止するため、株式等の含み益に課税する方針を明らかにした。

株式等のキャピタルゲインについては、株式等を売却した者が居住している国に課税権があるとされている。これを利用して富裕層が巨額の含み益を有する株式を保有したまま、シンガポールや香港などのキャピタルゲイン非課税国に出国し、日本国内における譲渡所得等に対する税負担を回避することが可能となっているのである。

キャピタルゲイン非課税国で永住権を持つ日本人は増加傾向にある。外務省によると、平成25年10月時点でシンガポールに1,852人(平成8年と比べて2.3倍)、香港に2,151人(同2.1倍)、ニュージーランドに8,444人(同3.4倍)、スイスに4,719人(同2倍)と、4ヵ国に限っても1万7千人を超える。

そのため、一定以上の資産を有する富裕層の出国時における未実現のキャピタルゲイン(未実現利益)に対する、譲渡所得課税の特例を租税回避防止措置として位置づけ、日本における対応を検討するとしている。

このような出国時に未実現のキャピタルゲインに対する特例的な課税措置等は、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、カナダなど、先進諸国の多くで講じられているが、未実現のキャピタルゲインに課税する場合は、納税資金が十分でない可能性もあることから、延納制度や納税猶予制度も設けられている。

また、一部の国では、出国後一定期間内に株式等を売却せずに帰国した場合、特例に係る課税を免除する制度もある。財務省は、国外に移住し、居住者となる者の出国時における未実現のキャピタルゲインを課税対象とするドイツ、フランス、カナダの導入例を参考に、早ければ平成27年度税制改正に盛り込む方針だ。