民法改正で見直しが検討される消滅時効

民法改正で見直しが検討される消滅時効

民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されて以来、120年間ほとんど改正されていないが、「社会・経済の変化への対応」と「国民への分かりやすさ」を図るため、法務相の諮問機関・法制審議会の民法部会は約5年の審議を経て、抜本的な見直しに向けた改正原案を公表した。

これをベースに来年2月の通常国会に法案を提出する予定だ。改正原案には、消滅時効の見直しや、法定利率の見直し、事業融資における保証人の保護、約款ルールの明記、債権の譲渡禁止特約の効力の見直しなど、多数の項目が盛り込まれているが、例えば、消滅時効制度では、主に債権の消滅時効について大きく見直すことが検討されている。

現行の債権消滅時効では、原則として、「権利を行使することができるときから10年間行使しない」ときに消滅するとされているが、一定の債権については10年よりも短い期間で消滅時効が成立する短期消滅時効制度が規定されており、工事の請負代金や医師の診療報酬などは3年、弁護士の報酬や商品の小売代金などは2年、宿泊代金や飲食代金などは1年となっている。

一方、弁護士と同じ士業であっても税理士や司法書士などの報酬には規定がないため、時効は原則の10年になる。このような職業ごとに定められた短期消滅時効は、フランス民法に由来する規定だが、フランスでは合理的でないとして既に削除されている上、複雑で分かりにくいといった指摘があることから、時効期間の単純化・統一化を行う。改正原案では、職業別短期消滅時効を廃止するとともに、原則的な時効期間に「債権者が権利を行使することができることを『知った時から5年間』」を加えるとした。現行の「権利を行使することができる時から10年間」は維持し、いずれかに該当する場合、債権は時効により消滅する。

これにより、契約に基づく一般的な債権については、契約時に支払日を認識しているのが通常であることから、支払日から5年間が時効期間となる見込みだ。